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「新緑」

青葉を吹き渡る快い風が吹く頃となりました。法皇山脈も日増しに緑を濃くし、一年で最も快適な季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。さて、気象庁の発表によれば、今年の5月から7月にかけては太平洋高気圧の張り出しが強まり、全国的に気温が平年より高くなる見通しです。5月でも25度を超える夏日が多くなるとの予報で、熱中症に対する備えが早くも必要です。特に5月は、まだ体が暑さに慣れておらず、発汗も不十分な時期です。

「暑熱順化(しょねつじゅんか)」とは、体を暑さに慣れさせることを意味し、個人差もありますが、数日から2週間程度かかります。急な高温に体が対応できないと、体温調節がうまくいかず熱中症のリスクが高まります。日頃から無理のない範囲で軽い運動や入浴を取り入れて汗をかく習慣をつけ、暑さに備えておきましょう。

感染症については、新型コロナの流行は落ち着きつつある一方で、感染性胃腸炎はやや増加しています。これからの季節は人との交流も活発になるため、感染予防の基本である「手洗い」が特に重要です。石けんと流水による丁寧な手洗いに加えて、アルコール消毒の併用を意識し、透析前後や食事の前後など、こまめに行うことが日常生活における感染症対策として非常に大切です。

また、現在の世界情勢にも注意が必要です。トランプ大統領による関税強化政策は国際的な貿易の流れに大きな影響を与えており、世界経済の悪化のみならず、日本経済の悪化の可能性も懸念されます。国内ではエネルギーや食料品の高騰が家計を圧迫しており、政府も厳しい対応を迫られる状況です。今後の動向を注視していく必要があります。

今回の透析室ニュースでは、透析患者さんに多い「睡眠障害」を取り上げ、快眠を導くための生活リズムの整え方や最新の薬物療法についてわかりやすく解説しています。また、患者様からご要望の多かった「透析食のレシピ紹介」も取り上げており、塩分やリンを控えながらも美味しく作れる工夫を紹介しています。日々の生活にぜひお役立てください。

理事長  溝渕 正行

「透析患者さんの睡眠障害」について

透析を受けている患者さんの約半数以上が、何らかの睡眠の問題を抱えていると言われています。夜なかなか寝つけなかったり、夜中や早朝に目が覚めてしまったりすることはありませんか。良い睡眠は、心と体の健康を支える大切な土台です。

今回は、透析患者さんに多い睡眠障害の原因と、その対策についてご紹介します。

 

なぜ眠れないのか? 透析患者さんに多い原因

  かゆみ

夜になると、かゆみは強くなりやすく、掻いてしまうことでさらにかゆみが増して眠れなくなってしまうことがあります。

  むずむず脚症候群 (レストレスレッグス症候群)

脚に不快感やむずむず感があり、じっとしていられない「むずむず脚症候群」では、寝る前に足を動かしたくなることで、寝つきが悪くなることがあります。

  透析中や昼間の寝すぎ

透析中にぐっすり寝たり、日中に長く昼寝をしてしまうと、夜の眠りに影響します。

  心理的な不安・ストレス

透析治療や病気に対する不安、ストレスも、眠れない原因になります。

 

質の良い睡眠のためにできること

 かゆみ・むずむず脚症候群への対応

かゆみが強いときは、塗り薬を使うなど早めに対処することが大切です。また、むずむず脚症候群も、我慢せずに医師に相談してください。

 規則正しい生活を

適度な運動や、朝日を浴びることが体内リズムを整えるのに役立ちます。特に朝の光は、夜に眠くなるために必要なホルモン(メラトニン)の分泌を促します。

また、食事は就寝2〜3時間前までに済ませましょう。寝る直前のカフェインやアルコール摂取も、眠りを浅くするので控えましょう。

 昼寝に注意

どうしても昼寝をしたい場合は、30分以内におさえ夕方以降は寝ないようにしましょう。

 

 リラックスできる環境づくり

寝室は暗く静かに保ち、室温を夏は26度前後、冬は20~22度、湿度は50~60%を目安に整えるのが理想的です。寝具も、季節に合った素材や、自分に合う枕を選びましょう。

また、明るい光は寝つきを悪くしますので、寝る直前はスマホやテレビを見ないようにし、読書などでリラックスするのがおすすめです。

 

それでも眠れないときは

生活習慣を整えても不眠が続く場合は、医師に相談することをおすすめします。場合によっては、不眠症治療薬の使用を検討することもあります。

不眠症治療薬にはいくつか種類があり、これまでに使われてきた「GABA(ギャバ)受容体作動薬」に加え、「メラトニン受容体作動薬」や「オレキシン受容体拮抗薬」なども登場し、薬による治療の選択肢が広がっています。

 

 

GABA(ギャバ)受容体作動薬

昔から使われているタイプで、脳の働きを鎮めて眠りやすくします。効果が強く、短時間で効果を実感しやすい、不安症状も改善されるなどの良い点もありますが、長期間連続して使っていると耐性(徐々に効かなくなってくる)や依存性があるという問題点があります。また、長期間の服用や高用量の服用では認知症の発症リスクが高くなる可能性もあるといわれているため注意が必要です。

 

代表的な薬剤

  • マイスリー(ゾルビデム)
  • レンドルミン(ブロチゾラム)
  • アモバン(ゾピクロン)
  • ルネスタ(エスゾピクロン)

 

ラトニン受容体作動薬

体内時計を整えるホルモン「メラトニン」と似た働きをする薬で、自然な眠りをサポートします。耐性や依存性が少ないのが特徴です。また、認知機能の低下を引き起こすリスクが低いと言われています。即効性という薬ではなく、「毎日飲んで自然な眠気を徐々に強くする薬」ということになります。

 

代表的な薬剤

  • ロゼレム

 

オレキシン受容体拮抗薬

脳を覚醒させる「オレキシン」という物質の働きを抑えることで、自然な眠りを促します。新しいタイプのお薬で、耐性や依存性が少なく転倒のリスクも少ないため、比較的安全に使いやすいとされています。認知機能への影響も少ないとされています。効果は個人差がありますが、翌朝にも眠気が続いてしまうことがあります。

 

代表的な薬剤

  • ベルソムラ
  • デエビゴ
  • クービビック

 

不眠症治療薬は、「薬を飲めば眠れる」という単純なものではありません。医師と相談しながら、自分に合った使い方をしていくことが大切です。

 

 

レシピ紹介                                        管理栄養士 田垣 綾菜

「レシピを教えてほしい」とお声をいただきました。当院の外来透析食は、栄養バランスをとりながら美味しくお召し上がりいただけるよう、メリハリのある味付けで香辛料を使うなどの工夫をしております。1食あたり食塩2g未満です。