ブログ

「初冬」

皆さん、こんにちは。寒さが一段と厳しくなり、本格的な冬の訪れを感じる季節となりました。今年も残すところわずかですが、いかがお過ごしでしょうか。このたび、当院では10月11日付けで副院長が院長に就任いたしました。これまで副院長として尽力してきた経験を活かし、患者の皆さまにさらに質の高い医療を提供できるよう、新しい体制で取り組んでまいります。なお、私は引き続き診療を続けてまいりますので、これまで同様どうぞよろしくお願いいたします。

短い秋を経て迎えたこの冬、感染症への警戒が必要な時期でもあります。今年はマイコプラズマ肺炎やインフルエンザ(特にA型)が例年を上回る流行を見せており、手足口病やリンゴ病(伝染性紅斑)が大人にも広がりを見せています。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染者数も増加傾向にあります。感染症予防の基本である手洗い、うがい、換気の徹底、そしてマスクの着用を改めて心がけ、油断することなく冬を乗り越えていきましょう。

当院では、新本館がオープンしてから2年半が経過し、スタッフも新しい環境に慣れ、患者の皆さまにより快適で安心な医療をお届けできるよう努力を重ねております。引き続き、皆さまの健康を支える場として成長していければと思っております。

今回の透析室ニュースでは、透析後の「しんどさ」や「疲労感」の原因とその対策について特集しております。また、高齢者に多い「低栄養」を予防するための工夫についても詳しくご紹介しています。この寒い季節を元気に乗り越えるため、ぜひ参考にしてください。さらに、12月10日には、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞するという、私たち日本人にとって誇らしい出来事もありました。一方で、10月の衆議院選挙後の政局は混迷を極めていますが、日々の生活の中で健康第一を心がけ、安定した暮らしを守っていきましょう。

寒さの厳しい季節が続きますが、感染症に注意し、体調を整えながら元気に年末を迎えられますよう願っております。どうぞお身体を大切にお過ごしください。

理事長   溝渕 正行

 

透析後のしんどさ・疲労感について   ~原因と対策~

透析後にしんどくて疲労感がある理由

透析後に「しんどい」と感じるのは、程度の差はありますが多くの患者さんに共通する症状です。

このしんどさの原因としては、透析そのものがからだに与える負担があります。透析では体外で血液を浄化するため、からだに非生理的なストレスがかかると同時に必要な栄養素やエネルギーも消耗します。

また、透析によって体内の水分が除去されることで、脱水状態になることがあります。脱水状態では、血圧が低下して疲労感やだるさが強くなります。

さらに、栄養状態も疲労感の重要な要因です。研究によると、血清アルブミン値(栄養状態を表す指標)が低い患者さんほど、透析後や非透析日に関わらず疲労感が強いことがわかっています。

栄養不足の状態では、からだが十分なエネルギーやたんぱく質を持たないため、筋肉量が減少し、基礎体力が低下しやすくなります。この結果、日常の活動がさらに減少し、疲労が悪化する悪循環に陥ることがあります。

 

透析後のしんどさを軽減するための対策

基礎体力を高める

基礎体力を向上させることは、透析後のしんどさを軽減するために非常に有効です。毎日30分以上歩く習慣がある患者さんは、そうでない方に比べて疲労感が少ないことが報告されています善します。また、運動は栄養状態の維持にも役立つため、全身の健康をサポートします。外に出られなくても、ちょっとした少しの運動でも継続して行うことで筋力の低下を防ぐことができます。どのような運動が適しているかは、主治医に相談して決めましょう。無理のない範囲で少しずつ始めるのがポイントです。

 

 

栄養状態を良好に保つ

養状態を良好に保つことは、疲労感を軽減する上で極めて重要です。血清アルブミン値が低い方は、食事内容を見直し、たんぱく質やエネルギーが不足しないよう注意する必要があります。

具体的には、魚や肉、大豆製品、卵などのたんぱく質を積極的に摂取し、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。ただし、個々の健康状態によって適切な食事内容は異なりますので、栄養士や医師に相談しましょう。

体重管理を心がける 

次の透析までの間に体重が増えすぎると、透析で多くの水分を除去する必要があり、これが疲労感を強める原因となります。

次の透析までの体重増加は、中1日で3%以内、中2日で5%以内に抑えるのが理想的です。これを実現するには、食事や水分摂取量をコントロールし、適切な体重管理を行うことが大切です。

 

それでも疲れが続くときは

体重管理や運動を取り入れても疲れが続く場合は、ドライウエイト(透析時の目標体重)が適切でない可能性があります。からだの状態や栄養状態は時間とともに変化するため、定期的に医師と相談し、ドライウエイト(目標体重)を見直すことが必要です。ここで、ドライウエイト(目標体重)が「きつい、あるいはゆるい」時にはどういうことが起こるか整理してみます。

また、栄養不足が疑われる場合は、血清アルブミン値を定期的に確認し、必要に応じて栄養補助食品を取り入れたり、食事内容を見直すことが必要です。

 

 

まとめ

透析後のしんどさ(疲れやだるさ)は、多くの患者さんにとって身近な課題です。

透析がしんどいというのはとてもつらいことですし、生活の質の低下を招きます。これを軽減するためには、基礎体力の向上、栄養状態の改善、体重管理など、日常生活の中で実践できる対策が重要です。

特に、栄養不足は疲労感を強める大きな要因となります。食事や運動に気をつけ、医師や栄養士と相談しながら対策を進め、元気な毎日を過ごしましょう。

 

 

高齢者がなりやすい低栄養 

~低栄養を予防するための食事の工夫~                管理栄養士  神原 華菜

 

「食べたい気持ちが起こらない」「あまり量が食べられない」など、加齢や体調不良で食が進まないことはありませんか?

また自分ではきちんと食べているつもりでも、体を動かすために必要なエネルギーやたんぱく質が不足している状態を「低栄養」といいます。

高齢者が陥りやすい「低栄養」は心身の機能低下や介護度の重度化につながるため、早めに気付き改善に取り組むことが大切です。

 

低栄養の改善と予防のために今すぐできる食事のひと工夫!

体力のベースは、エネルギーとたんぱく質

体の機能を維持するうえでまず必要なのは、エネルギーとたんぱく質。どちらが不足しても、体力も免疫力も落ちてしまいます。

  • 肉、魚、卵、大豆製品を、毎食手のひら1枚分くらいの量を目安に取りましょう。

1日に必要なたんぱく質量は [1.0~1.2g]×標準体重(kg) です。標準体重50㎏の人は1日50~60gとなります。上のイラストではたんぱく質の合計は40.6gになります。

これに主食でたんぱく質16gと他の副菜でたんぱく質4gを摂れば1日で約60gとなります。

  • ごはんやパン、麺類などエネルギー源になる主食を毎食しっかり摂りましょう。
  • 油を使った料理もエネルギーを摂るために効果的です。
  • 工夫しても食事量が少ないときは、栄養補助食品やおやつを取り入れましょう。

 

食事回数を増やしましょう!

一回の食事が多いと感じたときは、1食の量を減らし、回数を増やして補うようにしましょう。

 

食べやすくなる食事形態の工夫で、食事量をアップ!

噛む力や飲み込む力の低下がある場合は、食事の形態を工夫し食事量を確保しましょう。

柔らかく調理したり、刻んだりして食べやすくしましょう。

普通食をただ刻むだけでは、ものによって口の中でばらけてしまい、むせや誤嚥の原因になります。刻む場合はやわらかくして、つなぎ材料やとろみづけ材料でまとめましょう。

 

つなぎ・とろみづけになる食品

マヨネーズ・練りごま、みそ、オクラ、かぼちゃ、バナナ、豆腐、ひきわり納豆など