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「新 春」

皆さん明けましておめでとうございます。本年もどうかよろしくお願い申し上げます。

令和5年1月を迎え,このところ非常に寒い日が続いており,未だに愛媛県内でも新型コロナウイルスやインフルエンザ,感染性胃腸炎などが流行していますが,皆さんの体調はいかがでしょうか。

今回の三島クリニック透析室ニュースでは,感染症やその他の病気から身を守り,元気で長生きをするためにはどうすればよいかを理解していただければと思います。

歴史的にみれば透析治療が有料の時代もありましたが,現在では透析医療費の負担は殆どなくなっているわけですから,いい透析をしっかりと受けていただいて,体調を良くし元気で毎日を過ごしていただきたいと思います。

では,具体的にしっかりと透析を受けること以外にどうすれば体調が良くなれるかを簡潔にお知らせさせていただきます。

 

理事長 溝渕 正行

 

 

「元気で長生きするための4つのポイント」

初めに,日本における透析治療の歴史について簡単に知っておいてほしいと思います。

日本では1965年(昭和40年)頃、腎不全に対する治療法として透析治療(血液透析)が始まりました。当初は、保険診療としての適応が認められず、患者さん自身が高額な治療費の負担を強いられるという不幸な時代もありました。

しかし、患者さん自身が結束して患者会(現在の全国腎臓病協議会)を立ち上げ、透析医をはじめとする関係者の協力も得て国会や行政へ働きかけた結果、さまざまな福祉制度が実現していきました。

まず,1967年(昭和42年)に血液透析が健康保険の適応となりました。しかし、当時の健康保険制度では、社会保険の家族は5割、国民健康保険は3割の自己負担があり、1カ月あたり10~30万円(当時は大卒男子の初任給が4万円前後で年間平均国民所得が50万円前後)を支払わなければならず、経済的な理由から治療を断念する人も少なくなかったといわれています。

その後,1972年(昭和47年)の更生医療適応により透析治療を受ける方々の経済的負担が大幅に軽減されました。さらに,特定疾病療養受療制度重度心身障害者医療費助成制度などによって透析患者さんの負担はほぼなくなりました。

透析技術の進歩と医療費の負担の軽減により、透析患者数も増加しました。1968年の透析患者数はわずか215人でしたが、2021年末現在では349,700人となっています。

ちなみに2021年末の最長透析歴の方は52年8カ月ということですので,その方は透析治療の黎明期から透析をしているということになります。

 

透析をしながらでも元気で長生きをすることは難しいことではありません。ただ,守るべき大切なポイントがあります。今回はそのポイントを4つに絞って紹介します。

 

① 栄養(エネルギーとタンパク質)を十分にとり、体格を維持しましょう

栄養失調では長生きできません。栄養を十分にとることを欠かさないでください。そして、同時に食事を楽しむことも忘れないようにしましょう。

 

② 十分な透析を規則的に受けましょう

からだの余分な水分やたまった老廃物を除去することで、からだを健康な状態に近づけることができます。医師の指示にしたがって、決まった間隔でしっかりと十分な透析を受けましょう。

 

③ よく動きましょう

適度な運動は筋肉量を維持し生存率を高めるためには非常に重要です。散歩などができない場合は,家の中でもいいのでできるだけ動くようにしましょう。

 

④ 感染症にかからないようにしましょう

細菌やウイルスに感染すると、肺炎などの感染症のほか、炎症のために動脈硬化や栄養失調などを引き起こす可能性があり、からだに大きな負担をかけてしまいます。予防接種は必ず受けてください。シャントも清潔に保つよう心がけましょう。

 

細かい注意点はたくさんありますが,特に重要な4つのポイントをおさえましょう。まとめると,「しっかり食べて、しっかり動いて、しっかり透析」,もう一つ付け加えるなら「十分な睡眠」でしょうか。

どれも特別なことではありません。しかし,これらを続けていくことが最善の長生きのヒケツであることは間違いありません。

 

 

「透析食で大事なエネルギー」

エネルギーは体を動かすために必要な活動の源です。キロカロリー(kcal)の単位で表されるため、よく「カロリー」と呼ばれます。

私たちは食事からエネルギーを摂取し、体を動かすことでエネルギーを消費します。摂取量と消費量のバランスによって、体重が安定したり、太ったり、痩せたりするのですが、透析患者様で問題なのは、エネルギー摂取不足が続いて痩せてしまうことです。

エネルギー摂取不足が続くと、筋肉や脂肪がエネルギー源として使われるため、筋肉が痩せてしまいます。筋肉が痩せると、転倒しやすくなったり、免疫力が低下したりするので、骨折や感染症のリスクが高まります。入院や安静で動かなくなると、さらに筋肉が減ってしまいます。また,筋肉は脳を活性化するホルモンを出していますので,筋肉を活発にすると認知症の予防にもなるのです。今の生活を維持させるためにも、十分なエネルギーを摂取し、筋肉を減らさないことが大事です。

 

エネルギー源となるのは、たんぱく質、脂質、炭水化物の3つの栄養素です。たんぱく質1320%、脂質2030%、炭水化物5065%の比率で摂ることが適正といわれており、これらの栄養素を毎食に取り入れることが大切です。

 

 

 

 

 

 

 

エネルギー必要量は、身長や目標体重をもとに年齢、性別、合併症、身体活動度を考慮して算出します。摂取目安量を知りたい方は栄養士にご相談ください。

 

【例】70歳 男性 (身長160cm、体重56.0kg)

1日の摂取目安量1700~1800kcal

 

 

 

 

 

【例】65歳 女性 (身長150cm、体重49.0kg)

1日の摂取目安量1500~1600kcal

 

 

 

 

 

エネルギー摂取のポイント

・1日3食の食事を習慣にしましょう

・主食(ご飯、パン、麺類)は毎食しっかり食べましょう

・主菜(肉、魚、卵、大豆製品)を毎食必ず食べましょう

・毎食1品は油を使った料理(揚げ物、炒め物、マヨネーズやドレッシング)を食べましょう

・食事摂取量が少ない場合は間食でエネルギーを補いましょう

 

透析食(例) 1783kcal たんぱく質60.6g 食塩4.5g

 

 

460kcal

たんぱく質13.8g

食塩1.8g

卵と豆でたんぱく質を摂取。

目玉焼きに油を使います。

 

 

 

646kcal

たんぱく質23.5g

食塩1.4g

メインの魚、煮物に牛肉でたんぱく質摂取。

牛肉は油で炒めています。

 

 

 

 

677kcal

たんぱく質23.3g

食塩1.3g

中華丼の具材に豚肉とエビ。

サラダのツナでたんぱく質摂取。

豚肉は油で炒め、サラダはツナの油漬けとマヨネーズでエネルギーアップ。

 

 

ご飯200gは312kcal。たんぱく質5.0gを摂ることができます。お茶碗1杯しっかり食べましょう!

 

 

筋肉を鍛えましょう ~「筋活」のすすめ~

筋肉は何もしないと30歳を過ぎると減ってきます。筋肉は体を動かすだけでなく、健康の維持に大きく関わっています。筋肉量が減ると、転倒しやすくなったり、寒さに弱くなったりします。男性と比較して筋肉量が少ない女性の方が冷え性になりやすかったりするのはこのためです。大いに貯筋をしてください!

まずは下半身の筋肉を鍛えることをおすすめします。下肢の筋肉は手や腕の筋肉と比べて筋肉量が低下するスピードが速いからです。特に重要なのは、太ももの前にある筋肉(大腿四頭筋)とお尻の筋肉(大殿筋)です。私たちが立ったり歩いたりするために必要な筋肉です。

足腰を鍛えるトレーニングをご紹介します。無理のない回数から始め、徐々に増やしていきましょう。椅子は安定したものを使い、平坦で滑らない場所で行いましょう。

椅子スクワット

①      椅子に浅く座り、背筋を伸ばして、足は肩幅よりやや広めに開く。

②      あごを少しだけ引き、両手を胸の前で交差する。

③      太ももに体重をかけるように上体を少し前傾する。

④      この姿勢をキープして、ひざを伸ばしながら、お尻を持ち上げるようにゆっくり立ち上がる。体を前傾しすぎないように注意。

⑤      背筋を伸ばしたら、ゆっくりとお尻を下げ、椅子にお尻が触れた時点で一旦静止する。

⑥      その後、またゆっくりと立ち上がる。

 

*高血圧や心疾患、痛みなどがある方はあらかじめ医師に相談し、転倒のないよう注意して行いましょう。

 

管理栄養士 飛鷹 佳枝