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透析室ニュース
第67号 平成30年1月18日発行
「新春」
明けましておめでとうございます。
いよいよ平成30年の幕開きです。例年に比べ格別に寒い日が続いています。毎年寒い冬に必ずやってくるインフルエンザや感染性胃腸炎などの感染症が今や日本中で大流行を引き起こしています。外出時のマスク着用や外出から帰宅時のうがい、手洗いなどの確実な実行がこれら感染症の予防にとってもっとも大切だと思われます。また、暖房時には充分な湿度の調節を考えて、乾燥に強いインフルエンザなどを寄せつないように気をつけて下さい。
政治的には我が国の上空を北朝鮮のミサイルが月に何回も飛び交うといった非常に困った現象が続いています。何とか平和的な解決をめざして政府に頑張っていただきたいものですね。もう少し全国民的な眼で政治的な方針を議論して決定できるような国会づくりが大事なのでしょうか。
今年は我が国では4月から医療費の大改定が行われようとしています。透析医療にも厳しい締め付けが行われてくる可能性が大きいですので、皆でしっかり注目していきましょう。
話は変わりますが、最近の検査結果をみていますと昨年から今年にかけて皆様方の自己管理が一時よりも悪くなってきている気がしてなりません。当院でいくら良い透析療法を施行しても自己管理ができていないと全く意味のないものとなってしまいます。自己管理と良い透析治療が組み合わせて施行されて初めて格段に治療成績が良くなり、長生きができることがわかっていますので是非頑張っていただきたいと切に思います。
そこで、今回はまた基本に立ち戻ってリン、カリウムの問題から始めてみたいと思います。
理事長 溝渕 正行
適切なリンの値を維持するために(1)
Ⅰ.なぜリンが高いといけないのでしょうか
定期検査でリンの値が時々高くなる方もいますが、ほぼ毎回のように高い値の人も多くいます。その方達は、高リン血症の怖さがよく分かっていないのではないでしょうか?
リンが高くても自覚症状がなく、すぐに症状が出るわけでもありません。しかし、症状が全くないうちに、動脈硬化や骨の病気(骨粗しょう症)が進行してしまい、症状が出た時はすでに取り返しのつかないことになっている場合があります。
この動脈硬化というのは、血液中に増加したリンとカルシウムが結合して血管に沈着(血管石灰化)して起こるものです。血管石灰化によって、心不全・心筋梗塞、脳出血、末梢循環障害による足の痛みや壊死など非常に辛い症状を引き起こします。
「動脈硬化、骨粗しょう症」というと「老化」という言葉が連想されますが、まさにリンの摂りすぎは老化を促進しますし、高リン血症を続けることは生命を危うくすることだと認識し、自覚症状がなくてもしっかりリン管理をしてください。
Ⅱ.リンの値に興味を持ちましょう
リンの目標値:3.5 ~ 6.0 mg/dl
高リン血症を予防するためには、血液の中のリンを目標範囲内に管理する必要があります。自分のリンの値は、血液検査の結果でわかります。自分のリンの値を知ることが大事です。自分のリンの値が目標値の範囲に入っているか、検査後は必ず確認しましょう。
Ⅲ.食事について
「リンはどのような食事、食品に多く含まれているか」、「リンを上手に減らすポイント」などについては、次号以降に詳しく説明させていただくことにして、今回は簡単なポイントのみにします。
① 加工食品はできるだけ避けましょう
加工食品(ハム、ソーセージ、ベーコン、練り物、インスタント麺、プロセスチーズ、ファストフード)は添加物にリンが多く使用されています。
肉や魚、卵、豆類に含まれているリン(有機リン)は、腸管から体内に吸収される割合(吸収率)が20~60%であるのに対して、食品添加物として使用されているリン(無機リン)の吸収率は90%以上と高く、血清リン値が上昇しやすくなります。
② タンパク質不足に注意しましょう
リンを避けすぎるとタンパク質不足になることがあります。タンパク質は体の細胞を作る原料として非常に重要な栄養素です。同じタンパク質の量でも、リン含有量が少ないものを選びましょう。
③ 間食に気をつけましょう
間食で摂取する食事にもリンが含まれています。食事の種類によっては、間食からのリン摂取量も多くなりますので、気をつけましょう。
Ⅳ.薬を上手に利用しましょう
透析療法で除去できるリンの量には限度があるため、血清リン濃度を適正に保つためには、食事でのリンの摂取量を減らすことと、体に吸収されるリンを減らす「リン吸着薬」を服用することが重要です。
リン吸着薬は、食事の直前あるいは直後に服用することで、食品が放出するリンを効率的に吸着します。
リン吸着薬は「 決められた量を」「 決められた服用タイミング(食直前あるいは食直後)に」正しく服用してください。
しっかり透析をし、食事とリン吸着薬でリン管理をすることによって、血管や骨を守り元気な生活を続けることができます。
カリウムについて
カリウムは筋肉や神経の働きに不可欠な成分で、多くの食品に含まれています。
カリウム摂取過剰により、高カリウム血症の危険性が高まります。
高カリウム血症を放置すると心臓が大きなダメージを受け、不整脈や心停止を起こすことがあります。予防のためにはカリウムの多い食品を控えることが大切です。
カリウムを多く含む食品
果物類 :バナナ、メロン、桃、柿、キウイフルーツ、アボカド、干し柿、レーズン、バナナチップ、プルーンなどのドライフルーツ
野菜類 :ほうれん草、カボチャ、たけのこなど
きのこ類:しめじ、えのき茸、エリンギなど
芋類 :里芋、さつまいも、じゃがいもなど
海藻類 :ワカメ、ひじき、昆布(おやつ昆布、とろろ昆布)など
種実類 :ピーナッツ、アーモンドなど
豆類 :煮豆、納豆など
飲料 :果汁ジュース、野菜ジュース、抹茶、玉露、どくだみ茶、
そば茶、柿の葉茶、コーヒー、ココア、青汁など
菓子類 :芋けんぴ、干し芋、ポテトチップス、チョコレート、豆菓子など
食品中のカリウムを減らす工夫
- 果物は生食を控え、缶詰の実だけを食べましょう。
*カリウムが溶けだしたシロップ部分は残しましょう! - 野菜類は水さらし、ゆでこぼしを行いましょう。
*電子レンジ加熱ではカリウムは減りません。
低カリウム食品のご紹介
最近では、カリウムの摂取を控えている方でも生のまま食べることができる低カリウム野菜が多く開発・販売されています。
低カリウムレタスは一般のリーフレタスと比べ、カリウム含有量を80%以上カットしているので、透析患者様におすすめの商品です。身近なスーパーでの取り扱いもありますので、管理栄養士にご相談ください。