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透析室ニュース
第58号 平成26年11月25日発行
「初冬」
平成26年もいよいよあと1ヶ月あまりを残すのみとなってまいりました。気温も次第に下がり法皇山脈の紅葉も次第に頂上付近から下に降りてきつつあります。来月に入ると雪景色も見られることでしょう。
ところで皆様体調はいかがでしょうか。世間ではそろそろインフルエンザがすでに流行のきざしをみせ始めていますし、ノロウイルスや感染性胃腸炎もこれから流行が始まりそうな気配です。うがい、手洗いをしっかりして体力を十分温存して予防につとめて下さい。また世間ではアベノミクス解散とか称して衆議院が解散され選挙戦に突入しようとしていますが、こんなに忙しい時期にやや迷惑な話でもあります。政治家の方にはとにかく若い人達に負担をかけ過ぎることなくしっかり医療や福祉を充実させていただきたいものです。
今回の透析室ニュースでは「また?」と思われるかも知れませんが、水分増加の問題について再び取り上げたいと思います。最近どうも透析間の体重が増加し透析中に血圧が下がって苦労されている人が多くなっていますし、更には胸に水がたまり、また肺が水びたし(肺水腫)となり息ができにくくなる方もみられます。なぜ水の増加、過剰が身体に悪いのか、またどうやって水の増加を防ぐのかを今一度年末にしっかり御理解いただき元気に新しい年を迎えられるようにしていただきたいと思います。その他、足腰が弱っているのを防ぐための日常簡単に行える運動の話や栄養豊富な卵の上手な料理の仕方などについて特集をいたしました。
理事長 溝渕 正行
基本に戻ってもう一度「水分管理」について考えてみましょう
初めに理解していただきたいことがあります。それは、透析患者さんの「体重増加」には2種類あるということです。まず1つ目は筋肉や脂肪による体重増加です。これは1週間や1カ月・年単位で徐々に増える体重増加で、ドライウエイト(基礎体重)の増加を意味し本当に太った(簡単に言うと肉がついた)ということです。
2つ目は、水分のとり過ぎで、「水太り」で増える体重増加です。これは、透析患者さんに特有で、透析と透析の間の2~3日で急激に増えます。回診の時あるいはスタッフから「体重が増え過ぎです」と言われるのは、2つ目の水太りによる体重増加です。ですから、体重増加を抑えるために食事量を控えるという考えは間違いです。食事はきちんと食べて、水分管理をしっかりしていかないと長生きはできません。
水分をとり過ぎると、心不全、肺水腫(肺に水があふれ、呼吸が苦しくなる)、高血圧などをおこし、心臓・肺・血管といった生きていくうえで最も重要な臓器に大きな障害を与えます。特に、透析を受けている方の死因の第1位は心不全ですが、この心不全の原因のほとんどが水分のとり過ぎによるものです。
水分をとり過ぎ体重を増やしても、透析で抜いてもらえると安易に考えて「水分管理」が甘くなっている方はいらっしゃいませんか。今回の透析で大量の徐水がうまくいったから次も大丈夫という保障は全くありません。つまり透析中に心臓が止まってしまうことも起こらないとは限りません。透析を受けている方には、心臓の病気がとても起き易いということを十分認識していただかなければなりません。かけがえのない心臓をもっといたわり大切にしてください。
日本透析医学会の調査でもドライウエイト(基礎体重)の6%以上の体重増加は死亡リスク(危険度)を著しく高めることが明らかとなっています。言い換えますと、6%以上の体重増加は危険ですし、必ず短命になります。従いまして、体重増加は、2日あきでドライウエイト5%以内、1日あきでドライウエイトの3%以内を目標にしてください。
【当院で月2回お配りしています「体重増加推移表」には、体重増加の目標値を載せていますので参考にしてください】
「水分管理」をしっかり行えば、心臓の負担が軽減し、心臓が長持ちすると同時に、透析中の血圧低下・筋けいれん(足や手のひきつり)・胸痛・胸苦しさ・不整脈などを起こすことも少なく、楽な透析を十分行うことができます。それが、長生きをするためには最も重要なことです。回診のたびに体重の増加(=水分のとりすぎ)を繰り返し注意するのは、以上のような背景があることをご理解いただき、毎日の「水分管理」には十分気をつけてください。
「水分管理」をするために一番重要なことは「塩分制限」です。塩分をとった後の、のどの渇きを我慢できる人はいません。水分のとり過ぎ=塩分のとり過ぎということを覚えていただき、「減塩」を常に意識して薄味に慣れてください。
また、透析間の体重増加量は塩分摂取量で決まるといわれています。体重が1kg増えたということは、塩を約8gとったということになります。次の式を使って1日にどれくらい塩分をとったか計算することができます。
塩分摂取量 = 体重増加量(kg)× 8g ÷ 透析間(日)
(透析間の日数とはたとえば金曜日から月曜日までは2.5 日,月曜日から水曜日までは1.5日で計算します)
この式から計算すると、
1日あきの時に体重が
1kg増えた → 1日の塩分摂取量5.3g
2kg増えた → 1日の塩分摂取量10.7g
3kg増えた → 1日の塩分摂取量16.0g
4kg増えた → 1日の塩分摂取量21.3g
2日あきの時に体重が
2kg増えた → 1日の塩分摂取量6.4g
3kg増えた → 1日の塩分摂取量9.6g
4kg増えた → 1日の塩分摂取量12.8g
ということになります。
透析患者さんの1日の塩分摂取量は6.0g以下が推奨されています。
それを目標に減塩の努力を継続してください。
【減塩のための工夫】
① どの料理にも塩味をつけるのではなく、1~2品に集中して使い味にメリハリをつけましょう。
② 新鮮な食材を選び、素材そのものの味を楽しみましょう。
③ 肉や魚にほどよい焦げ目をつけると、それが塩分として感じられます。香ばしさをだし、調味料の塩分を控えめにしましょう。
④ レモンや酢、こしょうやわさび、しょうが、にんにく、ねぎ、カレー粉、辛子などを利用しましょう。
⑤ 塩分の多いかまぼこやちくわ、ハムやベーコンなどの加工食品はできるだけ控えめにしましょう。
⑥ 上手に油を利用しましょう。揚げ物は、塩を使った下味を控え、かけるソースやしょうゆも少量にすれば、比較的塩分の少ない料理です。
⑦ しょうゆやソースなどは、かけるのではなくつけて食べましょう。まずは一口食べて、たりないときだけしょうゆなどを使いましょう。
⑧ 外食では、寿司飯や丼類を控えて、ご飯に塩分のない定食を選びましょう。また、漬物や汁物も控えましょう。
たまごの簡単レシピ
管理栄養士 高石 美由紀
たまごは、「完全食品」ともいわれるほど栄養価が高く、安価で、簡単に調理ができ、消化・吸収にも優れている素晴らしい食材です。アミノ酸バランスのよい良質のたんぱく質や、ビタミン・ミネラル・必須脂肪酸などが含まれています。たまごには、ビタミンCと食物繊維は含まれていないので、野菜と一緒に食べるとより栄養バランスの良い食事になります。
1日1個をめやすに積極的にたまごを食べましょう。
ゆでたまご
鍋に水をいれて、たまごをゆでます。沸騰して13~15分 で黄身までかたまった完熟たまごの出来上がり。消化のよい半熟たまごは 沸騰して5分をめやすに。
☆ゆで卵を刻んだものにマヨネーズとこしょうを混ぜるとサンドイッチの具にもなります。
温泉たまご
発砲スチロールの器(カップめんなどの容器)に、室温にもどした殻つきのままのたまごを入れ、80~90度のお湯をたっぷりとそそぎ、お皿などでふたをします。時々器ごとゆりうごかして、20分ほど置きます。器の湯を捨て、冷水を入れてたまごの熱をさまします。※このほかに、レンジで作る簡単な方法もあります。
炒りたまご(スクランブルエッグ)
熱したフライパンに油をひいて、たまごを流し入れて、かき混ぜながら焼きます。
☆油を使うことで エネルギーを増やすことができます。
油のかわりにバターやマーガリンなどでもおいしくできます。
油はたっぷりいれるとふわふわに仕上がります。
※野菜をいれて卵とじにするとさらに栄養バランス良!
目玉焼き
熱したフライパンに油をひいて、たまごを割りいれます。水を少しかけてふたをして好みのかたさまで蒸し焼きにします。
☆ウスターソースやだしわりしょうゆで食べると、しょうゆの半分の塩分ですみます。ケチャップでも減塩になります。
生たまご
新鮮なたまごを選び、たまごかけご飯などに。
タマゴ Mサイズ1コ(可食部50g)あたり
エネルギー 76kcal
ビタミンA 75μgRE
水分 38.1g
ビタミンB1 0.03 mg
たんぱく質 6.2g
ビタミンB2 0.22 mg
脂質 5.2g
ビタミンB6 0.04 mg
炭水化物 0.2g
ビタミンB12 0.45 mg
カリウム 65 mg
ビタミンD 1μg
カルシウム 26 mg
ビタミンE 0.5 mg
リン 90 mg
ビタミンK 7μg
鉄 0.9 mg
コレステロール 210 mg
亜鉛 0.7 mg
食塩相当量 0.2 mg
透析中に アミノ酸※ がぬけるので食事でしっかり補給してくださいね。
(※ たんぱく質の構成成分)
【たまごのコレステロールについて】
たまごはコレステロールが多いことから、敬遠されることも多いですが、医師による制限がなければ、通常は心配ありません。むしろ、卵黄に含まれるレシチンには血中コレステロールを下げる効果もあります。ただし、コレステロール値がかなり高めの人や高脂血症の人は、体内でのコレステロール調整がうまくできないことも考えられるので、注意が必要です。
椅子に座って行う腕、肘の運動について
介護予防運動指導員 外山 早苗
<膝を合わせて両足開閉>
① 両膝を軽く合わせ、両足を上げます。
② 膝を合わせたまま、足先をゆっくりと開いて、閉じる動作を繰り返します。
*上体には力を入れずに、大腿部の外側に意識を集中させながらゆっくりと足先を開きます。
*目安は4~8回の反復で、足の開閉時には足先に力を入れないようにしましょう。
*太腿の筋肉が強化され、重心の左右の乱れへの対応力が高まります。
<膝の持ち上げ>
① 背中を背もたれにつけないよう、椅子に腰かけます。
② 片足を軽く上げて、膝を胸の方へ引き寄せます。
③ 力を緩めて、膝を少し戻します。
④ 寄せて緩める動作を3回繰り返し、足を下ろします。
⑤ 反対側も同様の動作を行ないます。
*膝を引き寄せる時は足に力を入れず、腹部と脚の付け根の動きを意識して行います。
*目安は3~6回の反復ですが、腰痛の方は無理をしないで下さい。
*股関節を持ち上げる筋肉と腹筋が強化され、歩行機能を改善する効果があります。