ブログ

「盛夏」

お盆の時期となり蒸し暑い日々が続いています。皆さん、体調はいかがでしょうか。次々と台風がやってきては各地に大雨を降らしています。熱中症や夏カゼにならないように日常生活には十分注意して下さい。
8月15日には日本は69回目の終戦記念日を迎えることとなりますが地球規模で眺めてみますと多くの戦争が世界の各所で発生しています。戦争のない平和な日本,世界になりたいものですね。さて今回の透析室ニュースではこの暑い夏をバテずに乗り切るためのカロリー(エネルギー)の摂り方について栄養室よりアドバイスがございます。
また統計によりますと透析患者さんの約20%の方が寝たり起きたりの生活になっているようです。これをくり返していると全身の筋肉が衰えてケガ(骨折など)をしやすくなり,長生きができない大きな原因となります。更に透析を受けるにあたって大変重要なシャントについて日頃よりどのような点に注意していけば良いのか各自の管理方法についての話を最後に載せることとしました。以上を参考にしていただいて“より良い透析ライフ”を築いていって下さい。

理事長 溝渕 正行

 

夏のエネルギー不足に気をつけましょう

管理栄養士 高石 美由紀

夏になると食欲が低下したり、身体がだるくなったりして、どうしてもさっぱりした食物を好むようになり、その結果エネルギー不足になりがちです.エネルギー不足では、病気に対する抵抗力や体力の低下、食欲不振、貧血、高カリウム血症のような症状があらわれてきます.
エネルギーは主に油脂類や砂糖・でんぷん(くずきり・春雨・片栗粉など)で増やすことができます. 例えば、肉や魚に衣をつけて揚げたり焼いたりする、ごはんをチャーハン(焼き飯)にする、たまごを油で炒めてスクランブルエッグするなどといった工夫でエネルギーを上手に増やすことができます.

エネルギー不足にならないために
① 主食(ご飯)を十分食べましょう
② 油料理を献立にとりいれましょう(揚げ物、炒め物、サラダなど)
植物油・バター・マーガリン・マヨネーズ・ドレッシング
③主食が食べられないときは菓子類などの間食で補いましょう(ただし菓子類は、日常的にはとりすぎないように)

 

シャント(バスキュラーアクセス)について

1.血液透析と血流量

血液透析では,体に溜まった尿毒素物質(毒素)や余分な水分を取り除くこと(除水)を行っています。そのためには,血管に針を2本刺して,血液を一度,体外に出して(脱血),血液浄化器を通し浄化された血液を体内に戻す(返血)ことを同時に行います。ここで十分な透析を行うために,約200~250ml/min程度(1分間に牛乳瓶1本分)の血流量が必要になります。血流量が少ないと毒素を取り除く効率が低下するほか,除水も十分に行うことができなくなります。

2.血管について

血管には「動脈(どうみゃく)」と「静脈(じょうみゃく)」という2種類があります。「動脈」は心臓のポンプの力によって,血液を全身に送る血管です。よって針を刺せば,十分な血流を確保することができますが,動脈は皮膚から深いところにあり,針を刺すことも,血を止めることも難しく,透析のたびに動脈に針を刺すことはできません。
「静脈」は血液が全身から心臓に戻っていく血管をいいます。採血などを行う血管(皮膚に浮き出ているような血管)はすべて「静脈」です。この「静脈」は「動脈」と比べ,皮膚から浅い所にあり,針を刺すことが容易ですが,通常の「静脈」には血液透析に必要な血流量が流れておらず,十分な血流量を確保することができません。
そこで発明されたのがシャントです。

3.シャントについて

シャントとは「動脈」の血管と「静脈」の血管をつなぐことをいい,シャントを作製するには手術が必要になります。シャントによって「動脈」から「静脈」へ,たくさんの血液が流れ込むようになり,「静脈」に針を刺して脱血することで十分な血流量を得ることが可能になります。
このようにシャントは血液透析を行うためになくてはならない大切なものなのです。また,シャントのように血液透析を行うために血液を出し入れする手段のことをバスキュラーアクセスともいいます。

4.シャントの管理

シャントに何かトラブルが発生すると透析ができなくなります。日々,十分な透析を受けるためにはシャントを大切にし,長持ちさせることが重要になってきます。そのためには日常的にシャントを観察することや,シャントにとって悪影響を及ぼすようなことについて細心の注意を払い,自己管理することがシャントを長持ちさせる秘訣になります。

5.シャントの観察と注意点

シャントの観察は1日2~3回は行ってください。観察は起床時や就寝前に行うとよいでしょう。また急な体調不良(倦怠感,下痢,嘔吐,発熱など)があったときもシャントに気を配る必要があります。

 

【シャントの観察方法】

① シャントが流れているかどうかを確認する。
「シャント音を聴く」
シャントに聴診器や耳を当てると「シャンシャン」という音が聴こえます。これを「シャント音」といいます。これはシャントでたくさんの血液が流れているため聴くことができます。流れていないと全く聴こえないか,わずかにしか聴こえません。

「スリルを確認する」
シャントに手を当てると血管の拍動(脈を打つ)と共に,振動が伝わってきます。この振動を「スリル」といいます。流れていないと,スリルは全く伝わりません。

② 感染を起こしていないか確認する。
「感染が疑われる症状」
・シャントの周囲や針を刺しているところが赤く腫れて痛む。
・膿が出る。
・シャントに触れると熱を感じる。等

「感染を起こさないために」
・常にシャントを清潔を保つように心がける。
・透析後に貼った絆創膏はそのままにし,翌日はがす。
・透析をした日の入浴は避ける。(針を刺したところからバイ菌が入る)
・かき傷や,かぶれをつくらない。(すぐに治療する)

シャントの流れが悪い兆候としては,シャント音は小さくなり,スリルはだんだん感じなくなってきます。また感染はシャントの閉塞をまねくほか,ひどくなると敗血症(菌が血液内に侵入し,高熱,寒気,関節痛,呼吸困難を引き起こす)になる恐れがあります。どちらの場合も素早い処置が必要ですので,「用事があるから」とか「明日透析に行ったときに」などと後回しにせず,すぐに病院を受診しましょう。

 

【日頃の注意点】

  • 手枕をしたり,睡眠中シャント側の腕を体の下にして圧迫しない。
  • シャントをたたいたり,物に強くぶつけない。
  • シャント側の腕に重い物をのせたり,買い物かごやかばんをぶらさげたりしない。
  • シャント側に腕時計やアクセサリーをはめない。
  • 手首の部分にゴムの入った衣類は着ない。
  • シャント側の腕で血圧測定や採血をしない。
  • 針を刺す場所を透析のたびに少しずつずらす。
  • 針を抜いた後の圧迫を強くしすぎない。
  • 止血ベルトを使用する場合は,きつく締めすぎず指で触れてスリルがわかるぐらいにし,2時間以内にはずす。(押さえもはずし,絆創膏を貼った状態にする)
  • 体重を増えすぎないようにして極端な除水をしなくてもよいようにする。(除水量が多いと血圧は低下しシャントの血流不良の原因になります)
  • リン・カルシウムを正常に保つ。(リンが高いとカルシウムと結合し,血管などにくっついて血管を細く硬くして血流不良の原因になります)
  • 自宅などで穿刺部から出血した場合は,にじむ程度ならガーゼを当てるか絆創膏を貼って軽く圧迫する。大量に出血した時は,あわてず穿刺部をしっかり押さえ心臓より高い位置に手をあげ10分程度様子をみる。それでもとまらないときは当院まで連絡してください。

 

良いシャントがあって初めて十分な透析ができ,それが長生きにつながります