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「新春」

撮影日:平成25年1月24日

平成25年、明けましておめでとうございます。今年の冬は例年以上に寒い日が毎日続いています。専門家によりますと北極の温度が年々上昇しその冷気が南下してアジアに影響を及ぼしているそうです。うがい、手洗いを頻回行っていただいてこの寒い時期に流行している感冒、インフルエンザ、感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)などにかからないようによく注意していただきたいと思います。糖尿病の患者さんや透析患者さんは免疫力が弱っていて感染症には一段とかかりやすいので一層の注意をお願いします。
政治に目を向けますと、我が国は外交面では周辺国との間で摩擦が続き膠着状態に陥っていますが、自民党新内閣を迎え経済面にはやや新しい動きが見えてきたような感もあり今後注目に値するところでございます。
今年最初の特集はリン(P)についてであります。回診時にリンの高値を御指摘させていただきましてもあまり関心を示していただけない方も少なからずいらっしゃるようです。しかし何度も申し上げている通り、高いリンの効果はすぐには現れないものの命をも奪ってしまう大変恐ろしいものなのです。その理由について内容を読んで理解をしていただきまして,解説に従って十分な対策をとっていただければ幸いです。

理事長 溝渕 正行

 

リンを適正値に保つことが長生きの秘訣です

回診の時,検査結果でリンが高いと,リンを減らすように言われる方が多いと思います。では,なぜリンが高いといけないのでしょうか?
それは,リンが高いと長生きができないことが分かってきたからです。透析を長く続けていると心臓や血管に関わる病気,例えば心不全,心筋梗塞,脳血管障害での死亡率が上がり,骨ももろくなります。その大きな原因の一つが血清リン値の上昇といわれています。逆に言えば,リンを適正な値に保つことで心血管系の病気になりにくくなって長生きすることができます。

なぜリンが高くなるのでしょう?

リンは,細胞の材料になったり,エネルギーを作ったりする役目があって,からだにとって大切なミネラルで,その多くは食事の中に含まれています。通常の1日の食事には約1,200mgのリンが含まれています。
健常者で,腎臓が元気であれば不必要なリンは尿の中に出ていきます。しかし,透析患者さんでは腎臓の働きがほとんどなく,リンを腎臓で処理し尿として排泄できないため,からだの中(血液の中)にリンがたまってしまいます。この状態を「高リン血症」といいます。

食事と透析のバランス

食事に含まれるリンの量の約60%が腸から吸収されます。1日あたり,低リン食として800mgのリンをとるとすると,その60%が500mgで,1週間だと3,500mgとなります。
一方,1回の透析で除去できるリンの量はせいぜい1,000mg程度です。週3回の透析だと1週間で3,000mgがからだから出て行くことになります。
このように,食事から入ってくるリンの量に,透析で除去されるリンの量が追いつかないため,少しずつからだの中にリンがたまってしまいます。これは,1日の食事のリンの量を800mgとした低リン食での計算ですが,通常の食事だと1日約1,200mgものリンが含まれているわけですから,からだにたまっていくリンの量もかなり多くなります。

リンが高いと血管や心臓に石灰が沈着します!

からだの中に増えすぎたリンは,カルシウムと結晶を作り石灰となり,骨以外のからだのあちこちに沈着します。それを「異所性石灰化」といいます。
石灰沈着がおこりやすいのは,関節周囲,心臓,血管,肺などです。また,皮膚に石灰沈着がおきると,カサカサした乾燥肌になったり,激しい痒みに悩まされるようになります。
異所性石灰化が関節周囲におこると,膝や肘などが自由に曲げられなくなったり,
また,運動時に痛みを感じたりするようになります。
血管に石灰化が起こると,血管の弾力性がなくなり動脈硬化が進行します。そうなると,血液の流れが悪くなったり,血管を詰まらせたりして,狭心症・心筋梗塞・心不全・不整脈・脳梗塞・脳出血などの生命に関わる病気(心血管疾患)が起こりやすくなります。また,足の血行も悪くなりますので,足の痛みや長く歩けないなどの症状も出てきます。
このように,高リン血症が原因で起こる異所性石灰化は日常生活を不自由にしたり,生命に関わるような症状を引き起こす重大な合併症です。

血液中のリン濃度を上げないためには

快適な長期透析を維持するためには,透析前の血液中のリンを6.0mg/dl未満に維持することが大切です。そのためには,

① 十分な透析をしてできるだけ多くのリンを除去しましょう。
② リンの少ない食べ物を選び,食事から摂るリンの量をなるべく減らすようにしましょう。

特にリンが高い食べ物

  • 乳製品(牛乳,ヨーグルト,チーズ)
  • 卵(鶏卵,いくら,たらこ),レバー
  • しらす干し,ししゃも,丸干し など
  • 肉や魚の加工品(ハム,ウインナー,かまぼこ,ちくわ など)
  • 洋菓子(ケーキ、プリン、チョコレート、アイス など)
  • おつまみ類(アーモンド、ピーナッツ、するめ、さきいか)
  • 主食に中華そば(ラーメン)や日本そばなどのめん類

リンの少ない食事については,栄養士にお気軽にご相談ください。

③ リン吸着薬をきちんと飲みましょう。

リン吸着薬は,食事から摂ったリンがからだの中に吸収される前に,胃や腸で食物中のリンと結合して,便とともに排泄する作用を持つ薬です。そのため,食事とリン吸着薬を飲む時間がずれると,リンがからだの中に吸収された後で薬が到着してしまい,せっかくの薬が役に立ちません。決められた量を食事の時にきちんと飲みましょう。

リンが高くてもカリウムと違ってすぐには何の症状も出ません。しかし,リンが高い状態(高リン血症)が続くと,からだの中では徐々に石灰化(=動脈硬化)が進んでいます。そして,症状が出た時にはもう元には戻れない非常に困った状態になっています。「リンが高いのは怖いこと」だということをいつも意識して,適正な血清リン値を維持することに取り組んでください。

【内容の一部は,WEBページ「リンを低く保つことが長生きの秘訣!」文責:熊本大学薬学部臨床薬理学分野田宮彰子,監修:熊本大学薬学部臨床薬理学分野平田純生,を参考にさせていただきました。】

 

「第12回三島クリニック講演会」のご案内

毎年御好評の講演会を下記の予定で開催致します。
講師の先生は、日本の透析療法学会の権威であり,日本透析医学会理事長であられる水口潤先生に御依頼しております。

◆日時  平成25年2月17日 (日曜日) 午前10時
(当日は9時30分までにご来場ください)
◆場所  コスモパル
◆講師  医療法人川島会 川島病院
院長 水口 潤 先生
◆演題  「元気で長生きをしましょう!!」

水口先生をお迎えしての講演は、またとない機会でございますので、御家族お誘い合わせのうえ、ぜひ御参加ください。なお、皆様のお知り合いで、他の施設で透析を受けられている方で参加ご希望の方がいらっしゃいましたら、ぜひお誘いください。
(他の施設で透析を受けられている方が、講演会出席を希望される場合は、申込書を提出していただく必要がありますのでお申し出ください。)