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猛暑に向けて -透析患者様へ-

「ムクゲ」撮影:平成17年8月9日

皆様体調はいかがでしょうか。厳しい暑さが続く毎日です。戸外ではせみが一生懸命鳴き続け、テレビでは高校野球が連日放映され、また社会では衆議院議員の選挙に向けた戦いが開始されていて、さらに暑さを増しています。暑いとどうしても冷たい水が欲しくなったり、冷たい果物が欲しくなって参ります。どうか上手にこれらの冷たい飲み物、食べ物をとっていただいて厳しい夏を乗り切り、健康を維持していっていただきたいものです。

話は変わりますが、去る6月24日~26日の3日間、横浜で日本透析医学会(会長:鈴木正司先生=昨年の第4回三島クリニック講演会にて講師をしていただいた信楽園病院院長)が開催されました。それに合わせて発行された2004年12月31日現在における「わが国の慢性透析療法の現況」によりますと、慢性透患者数は248,166人となっています。前の年より10,456人が増加しています。
これをもとにわが国の医療経済に目を向けてみますと、透析医療費が国民総医療費の4%近くを占めることとなっています。
皆様もご存知のとおり、日本経済は長期にわたり低迷し、さらに急速に少子高齢化社会となったため、わが国は財政難が深刻になってきています。このため透析医療に対する締め付けは、今後ますます厳しくなることが予想されます。

このような医療経済環境の中で、透析の質をいかにして高めていくかが透析医療機関としての課題であり、またその実現のためには、皆様のご協力が不可欠であります。今後も三島クリニックでは、「皆様が快適に、質の高い透析治療を受けられる透析施設」を目指してさらに努力を続けてまいりますので、よろしくお願いいたします。
今回は、以前の透析室ニュースでも取り上げました「透析患者さんに起こりやすい病変」について再び考えてみていただきたいと思いますので、ぜひご一読ください。

理事長 溝渕 正行

 

透析患者さんに起こりやすい病変

消化器の病変

胃のあたり(上腹部)が痛い、吐き気がある、吐くなどの症状は、透析者の皆様には、よくみられる訴えです。これらの症状には、透析が適正に行われなかったことによる場合もありますが、胃や腸などの消化管の病変によって生じる場合も少なくありません。

透析をうけている方には、胃炎や胃潰瘍をできやすくする要因が多数あります。例えば、胃液の分泌異常、肉体的・精神的ストレス、いろいろな薬の服用、これに胃粘膜の防御因子(胃粘膜にある胃液から胃壁を守る機構のことです)の低下、胃粘膜での血流量の低下などが加わり、容易にビラン(ただれ)や潰瘍ができやすくなっているのです。

潰瘍などの消化器疾患を放置することは、きわめて危険なことです。例えば、消化管の病変を示す自覚症状として重要なものに、排便時に肛門より出血する「下血」があります。これは、胃・腸管に傷ができてそこから出血していることを意味していますが、透析患者さんにおいては、消化管の出血は重大なことです。なぜなら透析では、ヘパリンなどの抗凝固剤を使用するため出血を増悪したり助長しやすく、時には高度の貧血を起こし生命の危機を生じさせるほどになることもあります。

実際、この消化管出血は、長期透析者の直接的な死因の上位にある見逃せない症状なのです。なお、医学の進歩した現在では、潰瘍などの消化管の病気は早期に発見されれば確実に治ります。

次に、少し恐い話になりますが、透析者の平均年齢が高くなっている今、多くの方が「癌世代」になっています。いろいろな調査において、透析者の悪性腫瘍(癌)発生率は健常者よりかなり高率です。また、悪性腫瘍(癌)のうち消化器の悪性腫瘍(癌)が半数以上を占めています。

まず、胃癌では、胸やけ・上腹部の不快感や痛み ・吐き気や嘔吐(おうと) ・胃部のしこり ・食欲不振 ・体重減少や体がだるい などの症状が出現します。もちろんこのような症状は胃癌以外でも出現します。例えば胃潰瘍・胃炎・ストレス等でも出現します。

次に、大腸癌ですが、大腸癌は最近増加傾向が著しい癌です。大腸癌は、非常に出血しやすい性質があり、検便(便の中の血液を測定)する方法で癌を発見します。なお、便検査は早期癌では陽性になりにくいことがあります。大腸癌では、・便秘や下痢を繰り返す ・便に血液が付着する(肉眼的には分からない場合があります) ・便が細くなる ・上腹部の不快感 ・残便感 ・体重の減少や体がだるい などの症状が出現します。なお、このような症状は大腸癌以外でも出現します。

胃癌・大腸癌では胃や大腸に癌がとどまっているときに手術すれば、 80%以上の人が助かると報告されています。その上、早期癌なら90%以上治癒します。

透析患者さんには、免疫機能の低下という問題があり、それが人間が本来持っている癌の抑制機能を弱めていると考えられています。言うまでもなく、癌を治すには「早期発見・早期治療」につきます。健常者でも「癌世代」の人は、早期発見には年一回の検査が必要とされているのですから、透析者の場合は、それに増す頻回の検査が必要なのです。いろいろな消化器症状を「よくありがちな症状」と軽くみないで、積極的に検査を受けられることをお勧めします。

 

後天性多のう胞化腎(ACDK)

透析が長期になると、思いがけない病態が出ることがあります。
以前は、透析者の腎臓は小さく萎縮する一方だと考えられていました。確かに、透析を導入して(個人差もありますが)大体6年くらいまでは、腎臓は萎縮してだんだん小さくなります。ところが、それ以降透析治療を長期間継続するにしたがって萎縮した腎臓にのう胞(小さな風船のようなもの)が多数出現するようになり、こののう胞のため萎縮していた腎臓が全体としては次第に大きくなることが分かりました。これを「後天性多のう胞化腎」といいます。

導入期まもない透析患者さんでは、まだのう胞はほとんどないのですが、透析期間が長くなるにしたがって増えていき10年以上の透析患者さんでは、90%以上の方にのう胞がみられ、その内の3分の1以上の人には10個以上ののう胞ができているといわれています。
なお、のう胞は原疾患(何が原因で腎不全になったか)に関係なく発生しますが、男女差があり、男性にできやすい傾向があります。どうして男性に多く発生するのか、そもそもなぜのう胞が発生するのかは、いろいろ原因が考えられていますが根本的な事は現時点では不明です。

こののう胞化腎の合併症としてはのう胞内の感染、のう胞の破裂、のう胞からの出血等がありますが、最も重要で怖いものが「腎癌」の発生です。透析期間が長くなるにつれて、癌化したのう胞が高頻度で発生することが分かっています。透析者における腎癌の発生率は健常人の15倍程度との報告もあります。

長期透析患者さんに認められる「血尿の出現」はこれら合併症(のう胞内の感染・のう胞の破裂・のう胞からの出血・腎癌)の重要なサインですから早急な検査が必要です。しかし、ほとんどの場合、のう胞化腎に合併する腎癌の初期には自覚症状がありません。ちなみに血尿によって腎癌が発見される頻度は少なく、腎癌の約80%は定期的な検査で発見されているといわれています。
不幸にして腎癌が発生していたとしても、のう胞化腎に合併した腎癌は早期に摘出しさえすれば、生命に危険を及ぼすことはありません。

こういった事から、当院におきましても透析者の皆様には、定期的に腹部のCT撮影(または超音波検査)を受けていただいています。
また、腹部CT撮影では腎臓以外の臓器、肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓等も同時に調べられますので、腹部臓器の悪性腫瘍発見のための検査でもあるわけです。

 

透析を受けながら、長生きするためには、これは健康な人にも当てはまることですが、いろいろな病気を「早期発見・早期治療」することが大切なことは、どなたにも容易にご理解いただけると思います。癌は今や決して「不治の病」ではありません。

自分自身の体を守るために腹部CT撮影や内視鏡検査(胃カメラ・大腸内視鏡)は、怖がらず面倒がらず、積極的に受けていただきたいと思います。

 

研究発表について

第50回日本透析医学会(平成17年6月24日~26日、横浜にて開催)において、
看護師の吉川基樹が研究成果を発表しました。

演題 「蛋白透過型PS膜の操作条件の違いによる溶質除去性能」

発表要旨
高性能のポリスルホン膜ダイアライザーでは、透析液流量と血液流量を上げることによって、β2マイクログロブリンなどの低分子量蛋白の除去効果を高めることができるが、同時にアルブミンの損失が多くなる場合があるので注意が必要である。

第16回愛媛人工透析研究会(平成17年8月27日、大洲にて開催)において、
看護師の吉川基樹が研究成果を発表する予定です。
演題 「東レメディカル社製TS-1.8PLの低分子量蛋白除去性能」

第39回四国透析療法研究会(平成17年9月25日、松山にて開催)において、
看護師の吉川基樹が研究成果を発表する予定です。
演題 「TS-PL膜の流量因子の違いによる溶質除去性能比較」

 

物療機器のご紹介 「スーパーテクトロン」

スーパーテクトロンは、従来の低周波治療器に比べ周波数が高く、皮膚の電気抵抗が非常に少なくなり、皮膚で消費される電気エネルギーが減少するため、不快と感じることが少なく、やわらかく気持ちよい刺激感があります。
絶えず波形や周波数、電圧、電流を変化させるため、より消炎鎮痛効果を発揮します。

高周波成分を多く含むため、治療電流を深部まで多く流せるため、使用後も治療感が長時間持続します。
マッサージ効果もあります。

 

適応症(以下の症状でお悩みの方に効果があります)
急性、慢性の筋肉痛  頸肩腕症候群(肩こり)  寝違え    肩関節周囲炎(五十肩) 変形性膝関節症   腰痛症     突発性腰痛(ぎっくり腰)   椎間板ヘルニア   坐骨神経痛  頚椎捻挫    腱鞘炎   リウマチ性関節炎 など