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透析室ニュース
第20号 平成17年4月23日発行
より良い体調維持に向けて
「撫子」
撮影:平成17年4月23日
長かった冬が終わりやっと春がきたと思ったら、華やかな桜の開花はあっという間に終わり、いつの間にか南の山々を見やると今度は新緑、ツツジなどまるで鮮やかな絵画をみているような豊かな彩りをみせているこの頃です。
皆様方、体調はいかがでしょうか。どなたもこの4~5月のさわやかな時期にこそ体調を整えて御元気で気持ちよく過ごしていただきたいと思います。
さて今回のテーマは、シャント(ブラッドアクセス)の話です。シャントは透析を続けていくためにはどうしても必要なもので、また良い状態のシャントこそが良い透析をうけられ体調を良い状態にできるもとになるものです。
したがいまして、ここで今一度シャントについての知識を点検していただきたいと思います。
理事長 溝渕 正行
シャント(ブラッドアクセス)
シャントとは
血液透析で効率よく体の中に溜まった老廃物を取り除くには、1分間に150ml~200ml以上の血液を体から引き出してダイアライザーに通す必要があります。その為には血液量の少ない静脈ではなく、血液量の多い動脈から血液を引き出さなければなりません。
しかし、動脈は深いところにあり針を刺すのも難しく、針を抜いた後も出血が止まりにくいため、透析のたびに針を刺すということはできません。
そこで、手術によって皮膚の下で動脈と静脈をつなぎ合わせ(バイパスさせて)、動脈の血液が直接静脈に流れるようにします。これを、「シャント」といいます。
シャントのことを、「血液透析のための血液の出し入れをする場所」という意味で「ブラッドアクセス」ということもあります。
シャントは、通常は利き腕でない方の腕の手首に近いところに作ります(静脈の走り方できまり、なかなか理想通りにはいきません)。シャント作成後2週間ぐらいで静脈が太く発達してきます。この発達した静脈に針を刺して透析に必要な血液を引き出します。
シャントの管理
「シャントは透析者の命綱」といわれるほど、透析を続けていくうえでシャントは非常に大切なものです。良いシャントがあって初めて十分な透析ができ、それが長生きにつながります。シャントを長持ちさせるためには、閉塞(つまること)と感染の予防が重要です。シャントの閉塞・感染予防の具体的な例をあげてみますので、次のようなことに注意してください。
- 1日1~2回はシャントが流れているかどうか確かめる習慣をつける。〔聴診器や耳をシャント部に当ててザーザーという音を聴いたり、シャント部に手を当てて血液が流れる振動(スリルといいます)があることを確認しましょう。〕
- 手枕をしたり、睡眠中シャント側の腕を体の下にして圧迫しない。
- シャントをたたいたり、物に強くぶつけない。
- シャント側に腕時計をはめない。
- シャント側の腕で血圧を測定しない。
- シャント側の腕で採血をしない。
- シャント側の腕に重い物をのせたり、買い物かごや鞄などをぶらさげたりしない。(シャントの腕を使ったスポーツや運動は全く問題ありません。)
- 手首の部分にゴムの入った衣類は着ない。
- 針を抜いた後の圧迫を強くしすぎない。
- 針を抜いた後の止血は、なるべく止血ベルトは使わず、できる限り自分で押さえて止血する。
(通常10~15分程度押さえていたら止血できます。) - 止血ベルトを使用する場合は、きつく締めすぎず指で触れてスリル(シャント血管の中を血液が流れる振動)が分かるぐらいにして、2時間以内にはずす。
- 体重を増えすぎないようにして極端な徐水をしなくてもよいようにする。(過度の徐水は、血圧低下を招きシャントの血流不良の原因になります。)
- シャントの血管の細い人は、ゴムボールなどを握り血管を発達させる。
- 針を刺す場所を透析のたびに少しずつずらす。(少なくとも5mmずつずらす。)
- 血液中のリンをコントロールする。(血液中のリンが高いとカルシウムと結合して石灰となり、それがシャント血管の壁にくっついて血管を細く硬くして閉塞の原因になります。)
- 針を刺すのを失敗して内出血した場合は、当日は冷やし翌日は暖める。
- 常にシャントを清潔に保つ。
- 透析をした日の入浴は避ける。(針を刺した部位を濡らしてしまうと感染の原因になります。)
- 透析をした直後に針を刺した部位が濡れたら、流水できれいに洗って乾燥させる(できれば針穴をイソジンなどで消毒する)。
- 止血部に貼られた絆創膏(チュウシャバンやOQバンなど)は翌日にははがす。
- シャントのある腕にかき傷やかぶれをつくらない。また、かき傷やかぶれができたらすぐに治療する。
シャントの閉塞の兆候としては、シャントの音が弱い、あるいは音が聞こえない、スリルが触れない、血管に沿って痛みがある、血管が硬く触れる、シャント側の腕が今までより冷たく感じるなどの症状があります。
また、シャントの感染の場合には、シャント部の周囲や針穴が赤く腫れて痛い、膿が出る、シャント部に熱を感じるなどの症状があります。このような異常があれば、素早い処置が必要ですので「用事があるから」とか「明日透析に行った時に」などと後回しにせず、すぐに診察を受けてください。
シャントの閉塞は、血栓(血管内にできた血の固まり)によって起こります。早く処置を行えば、手術をしなくても血栓除去ができることも多いのですが、時間がたって完全に閉塞してしまったら再手術が必要です。また、シャントの感染がおこればシャントが閉塞しやすくなるばかりか、感染がひどくなると敗血症(菌が血液内に侵入し、高熱・寒気・関節痛・呼吸困難をひきおこす)になる恐れがあります。
シャントの合併症
シャントの合併症には、静脈高血圧、スチール症候群、シャント瘤(「りゅう」と読み、「こぶ」のことです)などがあります。これらの合併症は、まれに発症することがあり、手術が必要になることもあります。
静脈高血圧
シャントによって動脈血が流れ込むと、静脈の圧力が高くなるため手の血液が心臓の方へ返りにくくなり、手の甲や指が赤黒く腫れ痛みが出ます。
スチール症候群
シャントに流れ込む血液が多くなると指先にくる血液の量が減り、指先が白く冷たくなりしびれや痛みが出ます。特に、透析時はダイアライザーの方へ血液をとられるので、指先にくる血液がさらに減少するため痛みが強くなります。
シャント瘤
動脈の高い圧力の血液が静脈に流れ込むことにより、静脈の内側の膜が傷つき薄くなり瘤ができることがあります。また、同じ部位にばかり針を刺していると瘤ができます。急に大きくなったり、赤紫色に変色した場合、あるいは感染した時には破裂することがあります。
シャントは透析を続けていく上でもっとも大切なパートナーです。日頃から大事に管理して長持ちさせてください。
高濃度人工炭酸泉製造装置(カーボメディカ)の導入
透析室ニュース18号で「フットケア」についての説明をさせていただきましたように、長期透析患者さんや高齢の透析患者さん、そして糖尿病の透析患者さんの増加に伴って足の病変が非常に多くなっています。
足の病気で特に問題なのが「閉塞性動脈硬化症」とよばれるものです。この病気は、足の血管の動脈硬化が進み血管が細くなったりつまったりして、足の十分な血流が保てなくなる病気です。足の血液の流れが悪くなると、足先の冷たい感じや痺れがおこり、進行すると歩行が困難になったり、もっとひどくなると足を切断しなければならないということもありえます。
このような足の血流障害に対して内服薬や注射による治療が行われていますが、これらの治療に加えて当院では人工炭酸浴治療(高濃度炭酸水による足浴)を行っています。これは、炭酸ガスを高濃度(1200ppm以上)に溶かし込ませたお湯で15分程度足浴をする治療です。
炭酸浴療法は足の血管を拡張する作用があり、足の血行障害を改善します。軽症(冷え症)から重症(閉塞性動脈硬化症)まで広く実施することが可能ですので、「歩くとすぐ疲れてしまう」、「足先が冷たくて眠れない」、「足が痛い」などの症状がある方はぜひお申し出ください。
物療機器のご紹介 「ビームセラソニック」
ビームセラソニックは、超音波による疼痛治療器です。
毎秒300万回の3種類の微弱超音波ビームを照射することによって、体の深部の細胞の高速マッサージを行います。このマイクロマッサージよって、毛細血管の拡張、新陳代謝促進、神経刺激作用等により、鎮痛効果及び病変組織の治癒(ちゆ)作用を促進します。
体感できる効果は2時間~6時間後からでてきます。その日の夜、または翌日には「軽くなった」「楽になった」と実感できることでしょう。繰り返しの治療をすることにより効果が得られます。ビームセラソニックの超音波ビームは、副作用の心配がほとんどありません。
適応症(以下の症状でお悩みの方に効果があります)
変形性膝関節症 肩関節周囲炎(五十肩) 腰痛
頚椎捻挫 寝違え 腱鞘炎 頸肩腕症候群
リウマチ性関節炎 自律神経失調症 など