講演会

開催日 2004年1月25日
講師 信楽園病院 副院長 鈴木 正司先生
演題 「透析患者さんのリンとカルシウムについて」

慢性の腎臓疾患に合併する骨・関節の病変を
「腎性骨異栄養症」=「ROD」という

腎性骨異栄養症は病像も原因も多彩である
二次性副甲状腺機能亢進症による線維性骨炎
ビタミンD欠乏性骨軟化症
混合性骨炎(線維性骨炎と骨軟化症の混合型)
低形成骨・無形成骨(骨の新陳代謝が行われない)
アルミニウム骨症
異所性石灰化
骨硬化症
骨粗鬆症
アミロイド骨関節症

透析患者さんでカルシウム、リンの異常が生じる理由
腎臓がカルシウム、リンを調節している

CaとPの異常は必然的に副甲状腺へ影響する


副甲状腺機能亢進症

蛋白摂取量とリン摂取量は相関している

蛋白質摂取量が増えるとリン摂取量も増える
リンが高い人は、食事中の蛋白質の量の再検討が必要

高リン血症の二つの重要な合併症
・異所性石灰化
・二次性副甲状腺機能亢進症


骨でないところに石灰が沈着する

<異所性石灰化とその影響>
Ca×P積高値(>70)、過度のアルカローシスなどで出現しやすい
・臓器石灰化
・血管壁石灰化
・関節周囲石灰化

異所性石灰化から見た原因
・血液中のリン(P)が高い
・血液中のカルシウム(Ca)も高い
・Ca値×P値の掛け算値(積)が高い
・血液がアルカリ性に傾き過ぎている

異所性石灰化への対策
・<急性>⇒リンを急いで下げる
・カルシウムも高い場合⇒下げる
(カルシウム剤、ビタミンD剤の服用中止)
・<慢性>⇒カルシウム、リンを上手に調節
・特殊な薬の併用も
・<血管の石灰化>治療は困難、予防が重要
(ダイドロネルが有効な症例もある)

血管の石灰化
<最近の研究から‥>
余分なカルシウムとリンの単なる沈着ではない
・血中のリン濃度が重要な誘引となり
⇒血管壁の中に骨(組織)を誘導・形成
「石灰化」ではなく、「骨化」
・結局は⇒リンが高いことがよくない

副甲状腺のホルモン(PTH)の働き
・腎臓に対して⇒Caの再吸収促進、リン排泄促進
⇒活性型ビタミンD産生促進
・骨に対して ⇒骨を溶かしてでも血清Caを増やす

副甲状腺機能亢進症(1)
<特徴的な臨床症状>
・立ち上がり、歩行開始時⇒骨痛、関節痛
ひどい痒み
・筋力の低下

副甲状腺機能亢進症(2)
<特徴的な血液検査>
・副甲状腺ホルモン(PTH)の高値
・ALP(アルカリ・フォスファターゼ)の上昇
・Ca値 :薬剤などの影響もあり、低値~正常~高値とさまざま
リン値 :ほとんど例外なく高い

副甲状腺機能亢進症(3)
<なぜ発病するのか?>
・腎臓が
1)活性型ビタミンDを作れない
2)リンを排泄できない
・カルシウムが低い/カルシウム受容体も減少
・活性型ビタミンDが不足/活性型ビタミンD受容体も減少
リンが高い

副甲状腺機能亢進症への対策
<医師がやれること>
・血液中のカルシウム(Ca)の調節
1)活性型ビタミンD
2)Ca剤
3)透析液のCa濃度調節
・血液中のリン調節
カルタン、炭カル、レナジェルの処方
・食事内容の指導⇒特にリン摂取量に注意

副甲状腺機能亢進症への対策
<患者さん自身がやるべきこと>
・常に血中リン濃度に関心を持つ
・リンの多い食物を避ける、減らす
・処方された薬を忘れずに服用
・薬⇒「腹部の不快」「便秘」など多い
⇒のみにくい場合は医師に知らせて薬の変更

副甲状腺の手術
・内科的治療が無効な場合
・4腺全てを切除
・一部を自家移植(筋肉内)

まとめ
・骨、関節の合併症は予防が重要
カルシウムとリンの調節が中心
・特にリンは重要⇒患者自身も参加して

・副甲状腺対策(内科、外科)は進歩
・アミロイド症への対策はまだ不十分
・高機能膜+透析液の浄化が望ましい