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「晩秋の真夏日」

今年もいよいよ11月を迎えましたが、地球温暖化の影響からか、いまだに気温25℃以上の真夏日があったり寒暖差の大きな毎日が続いていますが、皆様 体調は大丈夫でしょうか。

ちょうどここ数週間、四国中央市をはじめ愛媛県内では、いまだに新型コロナウイルス感染が散発しているうえに、インフルエンザが猛威をふるっている真最中です。皆様どうかこれらの感染症にかからないために、今迄と同様にマスクの着用、手洗い、咳エチケット、換気の実施などの感染対策を徹底して行ってください。ぜひよろしくお願い申し上げます。

今回の透析室ニュースでは、透析患者さんの健康寿命を守るために非常に大切な骨と筋肉の問題について考えてみましょう。

骨は人体の土台であり、骨折するとその部位によっては動けなくなって命を奪われることにつながりかねません。そして筋肉につきましては、しっかりとたんぱく質を中心とした栄養を摂取して、筋肉を丈夫にして自分で歩いたり自分のことを自分でできるように鍛えていく必要があります。そして以前の透析室ニュースでも話させていただきましたフレイル状態(加齢や病気に伴って身体の機能が低下することにより、さまざまな健康障害に陥りやすい状態)とならないようにすることが健康寿命を守る鍵となります。

ぜひ参考にしていただいて健康に役立ててください。

                         理事長 溝渕 正行

 

日光東照宮の紅葉  令和5年11月5日 撮影:高橋

 

 透析患者さんの骨折リスクについて 

  ~「寝たきり」にならないために~

 

高齢の透析患者さんが増えていますが、皆さんが一番不安に思っていることは、「寝たきりにはなりたくない」ということだと思います。寝たきりになる主な原因は、脳卒中や認知症、転倒・骨折といわれています。 寝ている状態が長く続く、あるいは後遺症が残って思うように動けなくなるなどによって、筋力や骨量が低下して長期の寝たきりになるリスクが高まります。

特に大腿骨の骨折は、そのまま寝たきりになるリスクがあります。骨折自体は手術ができれば治療できるのですが、透析患者さんでは心臓の病気を合併しているなど、体調によって手術ができないことがあるからです。

 

透析患者さんは骨折しやすい

骨折の多くは「転倒」が原因ですが、特に、糖尿病による神経障害や視覚障害などの合併症がある方と、運動不足や栄養不足による「筋力の衰え(サルコペニアといいます)」がある方は転倒の危険性が大きいです。また、睡眠薬を服用している方は、副作用として夜間や日中にふらつきが生じて転倒することがあります。

 

骨折の主な原因

転倒

65歳を超えると3人に1人が年に一回以上転倒するといわれています。さらに75歳以上になると転倒回数は急激に増加します。それに比例する形で骨折の回数も増えていきます。

 

 

骨粗しょう症

骨の量(骨密度)が低下して、骨の中がスカスカの状態になり、骨がもろくなる病気です。背中の骨が痛くなる、背骨が曲がる、身長が低くなったなどの症状が出て、年齢とともにだんだん進んでいきます。スカスカのもろい骨ですから、転倒だけでなくちょっとしたことでも骨が折れたり、ヒビが入ってしまうことになります。

 

 

骨粗しょう症の検査を定期的に受けてください

当院の骨密度測定装置は、およそ10分程度で腰椎(腰の骨)と大腿骨の骨密度を高い精度で測定できます。少なくとも年に1度、薬剤による骨粗しょう症の治療を受けておられる方は、半年に1度測定することをお勧めしています。

定期的に測定し、骨の状態を知っておくことは非常に重要です。ぜひ検査を受けてください。

 

 

日常生活でできる骨折予防のポイント

(骨折予防のために、患者さんが日常生活でできること)

まず、血中リン値を上げないよう食生活に注意することが大切です。リン値を適正に保つことは骨の健康のみならず、心臓病などの予防にもなります。とはいえ、栄養不足で筋力が落ちてしまってはいけませんので、リン吸着薬を処方されている方はきちんとのみながら、食事をしっかり摂るようにして下さい。

次に、転倒予防のために、筋力を維持・向上させる運動をいくつかご紹介しますので、無理のない範囲で続けてください。

 

  

() いすに座ったまま、太ももの上げ下ろしを左右それぞれ10回。

蹴り上げるように膝関節を曲げ伸ばす運動を左右それぞれ10回。

これを1カ月間、朝夕行うだけでも膝周辺の

筋肉がつき歩行がより安定します。

 

 

() いすに軽く手をつけ、両足をそろえて立ちます。

つま先を軸に踵をゆっくり上げ、膝を軽く曲げ

2~3秒間保持した後、膝を伸ばし踵を下ろします。

4~12回繰り返します。

   

() いすに腰掛け、上体をまっすぐに保ちます。両膝をゆっくりと

上げて、胸の方へゆっくりと引き寄せます。その後、力を緩め

ます。この一連の動作を3回繰り返します。その後ゆっくりと

脚を下ろします。2~3回反復します。

負担が大きい人は、片足ずつ行ってください。

 

 

よく動き よく食べ 体力を蓄えましょう

管理栄養士 飛鷹 佳枝

① 適度な運動で筋力をつけましょう

 

動いたり活動したりすることで、筋肉量を維持向上させることができます。日頃からウォーキングや筋肉を使う運動を行いましょう。家の中で動くことや、家事や草引きなどの身体活動も有効です。特に歩く、立つという基本動作を鍛える運動が大切です。

 

② 栄養はバランスのよい食事から

 

活力ある生活を送るためには、食事はとても重要です。偏った食生活は、低栄養を招く恐れがあります。特に、体をつくる成分であるたんぱく質と体を動かすために必要なエネルギーを、十分に摂る必要があります。リハビリや運動を行うときは、しっかり栄養を摂ることが効果をより向上させます。

 

③ 社会参加の機会を増やしましょう

 

外出や交流の場を広げることが、健康寿命に大切だということがわかってきました。散歩や買い物などの外出はもちろん、趣味や関心事を持ったり、新しいことを学んだりするのもよいことです。

 

 

透析食で大事なたんぱく質

たんぱく質は、筋肉、血液、内臓、皮膚、酵素などを構成する重要な栄養素の一つです。体のたんぱく質は、体内で全てをつくることができないため、毎食摂取する必要があります。透析での損失を考えると不足しやすいので、特に意識して摂る必要があります。たんぱく質をしっかり摂るための食事ができているか振り返ってみましょう

 

【例】男性 身長165cm 体重 60kg たんぱく質1日の目安量 60~70g(体重当たり1.0~1.2g)

  たんぱく質60gの食品例 

*野菜、芋、果実類から1日約5~6gのたんぱく質を摂ります

年齢の若い方、筋肉量の多い方、活動量の多い方は全体的に量を増やす必要があります。量を多く食べられないという高齢の方などは、特に意識して良質のたんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品)から食べるようにしましょう。食事が十分摂れない場合は、たんぱく質の入った栄養補助食品(エンシュアH、すっきりクリミール、ハイカロゼリーなど)を利用するとよいでしょう。

たんぱく質は一度に吸収できる量が限られています。また、筋肉の合成は常に行なわれています。よい身体を作るために、1日に必要なたんぱく質を3食に分けて摂るようにしましょう。