ブログ

平成22年晩秋

撮影:平成22年11月6日

これまでにないほど異常に過酷で長く続いた今年の夏がやっと過ぎ去ったと思うと、秋をゆっくりと味わう間もなくすでに冬を思わせる寒風の吹く季節となった今日この頃ですが、皆様の体調に御変わりはありませんか。この寒さの襲来で風邪やインフルエンザ、ノロウィルスなどの病原微生物がいっきに勢いを増し流行をみせ始めますのでくれぐれも御用心下さい。
ところで、民主党政権となって1年以上が経過しましたが、はたして期待通り日本は、日本の医療は良くなってきているのでしょうか。前々回号で私は日本及び日本の医療の将来が心配でならないと申しましたが、残念ながらその危惧通りとなり社会福祉は一向に改善せずむしろ悪化した感さえあります。更に外交にいたっては、中国、ロシアに翻弄され党内で内部分裂しかねない情けない状況となっています。医療を含む政治全体が以前より悪化していると感じるのは私だけなのでしょうか。
前回の透析室ニュースでも御紹介させていただきましたように当院は今年の10月6日で開院満30年を迎えました。当院の中での30年間を振り返ってみますと、ハード面におきましては6~7回の増改築と頻回の検査治療機器の整備を繰り返してきました。また、ソフト面におきましても年に1~2回の外来講師を招聘しての講演会、毎月のスタッフ勉強会、メーカー講演会、接遇マナー講習会などを通じて、時代の要請に応じた、少しずつではありますが確実な医療の質の向上を図ることができてきたのではないかと考えております。実際、今年の9月26日、高知での第44回四国透析療法研究会でも5演題を提出し、2演題が学術奨励賞をいただくなどと結果もでてきていると思います(四国全体で8演題が表彰されました)。
ただ、私共はまだまだこれで充分などと考えているわけではございません。悪化する医療政策や政治にもひるむことなく、更なる向上をめざして創意工夫を重ねて皆様方の健康の維持増進に努めていく所存でございます。そのために皆様方にもぜひ自己管理など御協力をいただけますようよろしくお願い申し上げます。

理事長 溝渕 正行

 


開院30周年記念旅行での写真です。
世界遺産
モン・サン・ミシェル(フランス)

「西洋の驚異」といわれるモンサンミシェル。
圧倒的な存在感と独特なオーラに感動しました。
撮影:2010年9月14日
透析センター 藤原


「超純粋(ウルトラピュア)の透析液」

日本の透析患者さんは29万人を超え30万人が目前となっています。そのうち4人に1人が透析歴10年以上です。なお、最長透析歴の患者さんは41年8ヶ月(2009年12月末現在、新潟県)の方です。ちなみに、当院においては3人に1人が透析歴10年以上となっています。
このような透析の長期化にともない、ミア(MIA)症候群に代表される全身的な合併症が問題となってきています。
ほとんどの方は「ミア症候群」という言葉を聞いたことがないと思います。
ミア(MIA)症候群とは、栄養障害(Malnutrition)・慢性炎症状態(Inflammation)・動脈硬化(Atherosclerosis)の英語の頭文字をとったものです。
ミア症候群は、「慢性炎症状態では栄養状態を悪化させ、さらに動脈硬化の進展を助長する」ということですが、この慢性炎症を起こす一番の原因は透析液の汚染であることが分っています。
少し難しい説明になりましたので、分かりやすい言葉で言い変えると、「ミア症候群とは、不純物(特にエンドトキシンとよばれる細菌が出した毒素)が混じった透析液で透析を続けていると、慢性的な炎症が起き、それが引き金となり栄養状態が悪くなり、動脈硬化もどんどん進み、体がだんだん弱っていき、いろいろな合併症がでてくるようになる」という大変恐ろしい問題です。
ミア症候群対策として、また透析アミロイド症対策として、当院では他施設に先駆けて透析液の清浄化に長年努力してきました。そして、今年3月には、「さらにクリーンな透析液」を供給するために、熱水消毒仕様の2段RO膜処理システムである逆浸透法精製水製造装置を日本で初めて導入いたしました。これにより、超純粋(ウルトラピュア)の透析液を使用した透析治療が可能となりました。

透析医学会が定めた透析液水質基準と当院の測定値

超純粋透析液を使用した透析治療では、

① 手根管症候群の発生頻度の減少
② 血清β2-ミクログロブリン濃度の低下
(血清β2-ミクログロブリン ⇒ 透析アミロイド症の原因物質)
③ 血清CRP値の低下 (血清CRP値 ⇒ 炎症を調べる検査)
④ 血清アルブミン値の上昇(栄養状態の改善)
⑤ 貧血の改善
⑥ 肌が白くなる

などの効果があります。

透析治療では、4時間透析で120L、5時間透析で150Lもの透析液が必要です。これだけ大量の透析液が透析膜を介して血液と接するわけですから、超純粋でない透析液では、たとえごくわずかの汚染であっても一部の不純物が血液中(体の中)に取り込まれることになり、それが長期にわたって繰り返されています。
透析液の水質管理に力を入れている施設とあまり力を入れていない施設の違い、あるいは透析の質の良し悪しは短期間では分かりにくいものですが、長期間になるとその差は歴然としたものになります。
透析患者さんが「元気で長生き」するためには、なにより超純粋(ウルトラピュア)透析液が必須の条件なのです。

 

栄養室より

管理栄養士 高石 美由紀

透析前の体重測定のことを考えて、透析日の朝食を食べなかったり、主食のごはんやパンを食べるのを我慢したりしていませんか? それで透析中におなかが空きすぎて気分が悪くなったりしていませんか? リンやカリウムのことが気になって、肉や魚や卵の量を減らしすぎていませんか?
これらは間違った食事の考え方です。こういったことを続けていると、エネルギーとたんぱく質などの栄養が不足してしまいます。栄養状態が悪くなると、抵抗力も落ち風邪や病気にかかりやすくなります。
透析でいわれる「体重を増やし過ぎ」というのは、食べ過ぎのこともありますが、食塩と水分のとり過ぎによることの方が多いです。減塩の工夫をして決められた水分量は守り、食事の量は不足しないように注意しましょう。
特に70歳以上の方は、肉や魚や卵などに含まれるたんぱく質の量が不足しがちです。また、しっかりと水分量を守ろうとされて、逆に水分や食事量が不足されている方もいらっしゃいます。水分のとり過ぎや食べ過ぎはもちろんよくありませんが、控え過ぎにも気をつけてください。
「しっかり食べて、しっかり透析」、自分に合った食事の適量を覚えて、食事を楽しんでください。

 

「インフルエンザに気をつけましょう」

インフルエンザ流行開始の兆しがみられています。十分お気をつけください。

インフルエンザを予防するには、

  • 予防接種を受ける
  • 外出後の手洗いとうがいをきちんと行う
  • 栄養と休養を十分取る
  • 人ごみを避ける
  • 適度な温度、湿度を保つ
  • マスクを着用する

といったことをお勧めします。

今季のインフルエンザワクチンは、新型と季節性インフルエンザワクチンが一つになりました。新型インフルエンザ(A型H1N1)と.季節性インフルエンザ(A香港型、B型)の3 株混合のワクチンです。

 

「ノロウイルス食中毒に注意しましょう」

これから来年3月にかけノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行時期を迎えます。
ノロウイルスは、感染力が強く患者の便や吐いた物を介して感染が広がります。感染から発症まで1~2日間かかります。主な症状は吐き気、嘔吐(おうと)下痢、腹痛です。その他,頭痛,発熱(37~38℃)などかぜとよく似た症状がみられる場合があります。
通常は,発症後3日以内に治癒しますが、激しい嘔吐や下痢により急激に水分を失うことがありますので、特に乳幼児や高齢者では脱水症状に気をつける必要があります。

予防のポイント

  • 感染予防対策としては、手洗いが最も大切です。調理の前、食事の前、トイレの後は、せっけん(液体せっけんが望ましい)を使用し、流水で十分に手を洗いましょう。
  • まな板、包丁、ふきんなどはよく洗浄し、熱湯などで消毒しましょう。
  • 食品を加熱調理する場合は,十分に加熱しましょう。(中心部85℃,1分以上)
  • 水道水以外の飲料水は、煮沸して飲用しましょう。
  • 二枚貝や生鮮魚類を生食する場合は,食品の生食用の表示(生食用,刺身用など)を確認しましょう。
  • 下痢、嘔吐などの症状がある時には調理に従事しないようにしましょう。