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はじめに

皆様体調はいかがですか。今年は気候も不順で気分的にも憂鬱(ゆううつ)になりやすく、体調もくずしやすい状態が続いています。このような時は、是非食事を中心とした日常生活に十分配慮し、体調の維持に御留意下さい。

また、このたびは台風21号の直撃を受け、愛媛県とりわけ東予地方は大変な被害にあってしまいました。皆様の中で台風の被害を受けられた方に心より御見舞い申し上げ早期の復旧をお祈り申し上げます。

さて、このたび三島クリニック透析室ニュースを再開することと致しました。皆様の長生きのために参考になる事柄をやさしく解説しお知らせさせていただきますので大いに御活用下さい。
基本的な事のくり返しになるのですが、重要であるが故にくり返されるのだとわかっていただけたら幸です。

理事長 溝渕 正行

 

基本に戻って水分管理について考えてみましょう

透析医療が普及して30数年以上の歳月が経過しました。日本透析医学会の統計によりますと、2003年末における慢性透析患者数は23万7710人、最長透析歴は37年6ヶ月となっています。1年間にほぼ1万人の透析患者が増加していますので、現時点では患者数は24万人を確実に超えていると思われます。

さて、当三島クリニックは開院してこの10月で25周年を迎えます。現在当院で透析治療を受けられている患者様は91名いらっしゃいますが、透析歴20年以上の方が10名と1割強を占め、また、30年以上の方が4名もいらっしゃいます。それは、透析施設としてとても誇らしいことです。これはなぜかと申しますと、「透析の質」つまり透析の良し悪しはその後の5年~10年先にわかるのです。日々の透析が一見同じにみえても、5~10年先には日々の透析の良し悪しの積み重ねが症状の差となってめだってくるわけです。「透析の質」は10年単位でみていかないとわからないのです。私どもは、今後も「透析の質」のより一層の向上に努めるともに、「合併症を起こさない透析」を目標とし、40年さらにそれ以上長生きできる透析治療の実現に努力していきたいと思っています。

また、高齢化社会の到来の縮図とでも言うべく、当院の患者様の36%(約3人に1人)が70歳以上ということから、「体に負担の少ない、あるいは、体に優しい透析」でもなければならないと考えております。

しかしながら、このような透析治療の実現は、私をはじめスタッフの努力だけでは不可能なことで、皆様方のご協力、すなわち皆様自身による「自己管理」が不可欠です。今回は、その「自己管理」の中でも基本中の基本である「水分管理」について今一度考えてみましょう。

水分をとり過ぎると、心不全、肺水腫(肺に水があふれ、呼吸が苦しくなる)、高血圧などをおこし、心臓・肺・血管といった生きていくうえで最も重要な臓器に大きな障害を与えます。特に、透析を受けている方の死因の第1位は心不全ですが、この心不全の原因のほとんどが水分のとり過ぎによるものと言っても過言ではありません。水分をとり過ぎ体重を増やしても、透析で抜いてもらえると安易に考えて「水分管理」が甘くなっている方はいらっしゃいませんか?

透析を受けられている方の心臓は、尿毒素などの影響で心筋が痛んでいるといわれています。心筋は一度傷んでしまうとなかなか元通りにはなりません。尿毒素で傷つき、そのうえ水分をたくさん増やしてきて透析で無理して徐水し、また水分を増やすということを繰り返して心臓をいじめていたら、心臓も参ってしまいます。今回の透析で大量の徐水がうまくいったから次も大丈夫という保障は全くありません。つまり透析中に心臓が止まってしまうことも起こらないとは限りません。透析を受けている方には、心臓の病気がとても起き易いものであるということを十分認識していただかなければなりません。かけがえのない心臓をもっといたわり大切にしようではありませんか。

日本透析医学会の調査でもドライウエイト(基礎体重)の6%以上の体重増加は死亡リスク(危険度)を著しく高めることが明らかとなっています。言い換えますと、6%以上の体重増加は危険ですし、必ず短命になります。従いまして、図3にありますように体重増加は、2日あきでドライウエイトの5%以内、1日あきでドライウエイトの3%以内を目標にしていただきたいと思います。

なお、血圧の高い方、糖尿病のある方、心臓に問題のある方、心胸比が常に大きい方、高齢者の方などは、容易に心不全を起こして死亡する危険性がより高くなりますので一層の「水分管理」を心掛ける必要があります。

「水分管理」をしっかり行えば、心臓の負担が軽減し、心臓が長持ちすると同時に、透析中の血圧低下・筋けいれん(足や手のひきつり)・胸痛・胸苦しさ・不整脈などを起こすことも少なく、楽な透析を十分行うことができます。それが、長生きをするためには最も重要なことです。

回診のたびに体重の増加(=水分のとりすぎ)を繰り返し注意するのは、以上のような背景があることをご理解いただき、毎日の「水分管理」には十分気をつけていただきたいと思います。

 

透析間の体重増加量の目安

  • 透析間1日  ドライウエイトの3%以内
    (例) ドライウエイト(基礎体重)が50㎏の方は1.5㎏以内に
  • 透析間2日  ドライウエイトの5%以内
    (例) ドライウエイト(基礎体重)が50㎏の方は2.5㎏以内に

自分のドライウエイトをご存知ですか?
ご自分の体重増加の目安を計算してみてください。

 

水分制限の工夫・注意点

 

①塩分をとり過ぎない。
塩分を多くとった後の、のどの渇きを我慢できる人はいません。「水分管理」の基本は「塩分制限」です。うす味に慣れてください。特に加工品や外食には塩分が多いので注意が必要です。どうしても塩分制限のできない方は、食事の塩分を減らす方法を栄養士に相談することをお勧めします。

②糖尿病の方は、血糖が上がるとのどが渇きますので、血糖管理が大切です。

③毒素(特に尿素)が増加しても血液中の浸透圧が上がりのどが渇きますので、蛋白質を必要以上にとり過ぎないこと、また透析不足にならないようにすることが大切です。

④飲み水(お茶、ジュース類)は決まった容器で飲み、飲んだ量が自分でわかるようにする。

⑤果物、野菜は80~90%が水分なのでとり過ぎに注意する
(カリウムのとり過ぎにもつながります。)

⑥のどが渇いたときは、氷を含む、冷たい水でうがいをする、熱いお茶を少し飲む、などによって口の中をすっきりさせる。ただし、氷は1個が約20mlの水分です。10個食べるとコップ一杯の水を飲んだことと同じになります。うがいでは10ml以上の水を飲み込んでいるといわれています。うがいのしすぎはよくありません。

⑦透析が2日あく時は、1日あく時よりも飲み水を制限する。

⑧体重増加の多いときは、1日1食はパン食にする。

⑨よく体を動かすと、汗をかいたり不感蒸泄(ふかんじょうせつ)が多くなるので、水分が少し減ります。
(不感蒸泄とは、自分では感じないうちに皮膚や呼吸によって水分が蒸散されることです。)

特に塩分制限について、もう一度食生活を見直してください。そうすれば、「水分管理」がもっと楽になるはずです。

 

研究発表について

第49回日本透析医学会(平成16年6月18日~20日、神戸にて開催)において、臨床工学技士の佐藤竜二が研究成果を発表しました。
演題
「長期透析患者へのAPS‐E膜によるHDFの臨床評価」

第15回愛媛人工透析研究会(平成16年8月28日、松山にて開催)において、看護師の伊藤、吉川が研究成果を発表しました。
伊藤千春
演題
「高カリウム血症に関する認識と改善剤の服薬について」

吉川基樹
演題
「蛋白透過膜HDFにおける置換液注入法の検討」
-Alb損失量の低減化ができるのか-

第38回四国透析療法研究会(平成16年9月5日、高松にて開催)において、臨床工学技士の佐藤、看護師の吉川が研究成果を発表しました。
佐藤竜二
演題
「APS‐E膜によるpost‐HDFの臨床評価」

吉川基樹
演題
「蛋白透過膜HDFの置換液注入法の違いによる溶質除去性能の比較」